固定残業代制度について

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固定残業代制度とは、労働者が時間外労働をした場合に支払われるべき残業代について、働いた時間数に応じて支給するのではなく、予め取り決めた一定の金額とすることを指します。

労働基準法では1日の仕事は8時間までと決められている

労働基準法では、1日の仕事は8時間までと決められていて、原則それを超えて働かせることはできません。
ですが、会社や部門が実施しなければならない仕事は常に一定であるとは限らず、忙しいときもあれば比較的余裕があるときもあるのは致し方ないことであり、忙しいときにそれに対応して仕事をしなければならないことがあるのは、ある意味で会社は当然のこととも言えます。
そのため、会社は労働者に対して残業を命じることができることになっています。
この場合、残業した時間については、少なくとも本来の時給の1.25倍の割増賃金を払う必要があります。

本来の時給の1.25倍の割増賃金を払う事例

具体的な例を一つ挙げますと、例えば1日8時間、1か月の労働日数が平均して20日で、基本給として32万円をもらっている人のことを考えてみます。
1か月の労働時間は8×20で160時間となり、32万円を160で割ると2000円となりますから、この人の時間給は2000円となっています。
会社がこの人に残業を命じる場合、1時間あたり少なくとも2000円の1.25倍の2500円を支払う必要があることになります。
もしある日に2時間残業したとすれば、その日の残業代は5000円になるといった具合です。
このように、通常は、残業した場合はその時間数に応じて残業代が計算されることになりますが、そうではなく、予め取り決めた一定額にしておこうとするのが固定残業代制度になります。

固定残業代制度とは

例えば、1か月5万円を固定とするといったやり方がこれに相当します。
この制度は、何の制限も制約もなく会社側が好きなように導入できるものではありません。
無茶な取り決めをされては、労働者にとって不利になることも十分ありそうだというのは、誰でも感覚的に分かることです。
そういったことが発生しないよう、いくつかの制約の元で実施しなければなりません。
でないと、導入した制度は無効と見なされ、通常どおり、働いた時間に応じた残業代を支給し直すように命じられることもあります。

基本給と残業代の部分を明確に区別すること

導入にあたって留意すべきことは、まず基本給と残業代の部分を明確に区別することが求められます。
分かりやすさの観点で先ほどの例をそのまま使いますと、基本給32万円及び固定残業5万円などのように、両者が明確に分かるようにしなければならないわけです。
これを、固定残業込みで37万円などのようにしてしまっては、どこまでが基本給でどこからが残業代か分かりませんから、適切とは言えません。
続いて、その固定残業代とは、何時間分の残業代なのか、時間数を明示する必要があります。
実際には何時間働くか分からないのだから示しようがないなどという言い訳は通用しません。
会社として、その残業代は一体何時間分の時間外労働に相当するものなのかを明らかにする必要があるのです。
例えば、20時間分の固定残業として月に5万円とするといったようなことが求められるわけです。

無制限に時間外労働をさせて良いわけではない

そして、会社にとってはある種の驚きなのかもしれませんが、この制度を導入したからと言っていくらでも無制限に時間外労働をさせて良いわけでは決してありません。
予め取り決めた固定残業の時間数を超えて残業をした場合には、別途割増賃金を支給しなければならないのです。
先の例で言えば、もしその労働者が1か月に30時間の時間外労働をした場合、32万円と5万円の合計で37万円の月給だけを支払えば良いわけではありません。
固定残業の5万円は20時間分しかないのですから、超過した10時間分については別途支給することが求められ、その額は割増し賃金である時給2500円に10を掛けた2万5千円となります。
結果としてこの人のその月の給料は合計で39万5千円になるわけです。

仮に取り決めた時間数よりも短い時間しか時間外労働をしなかった場合

一方で、仮に、取り決めた時間数よりも短い時間しか時間外労働をしなかったとしましょう。
例えばある月は比較的業務の閑散期で、月に10時間の時間外労働しかしなかったというケースです。
この場合、固定給の32万円はともかくとして、固定残業の5万円について幾分かは差し引いて良いのではないかと思われるかもしれませんが、実はこれも認められていません。
超過した部分は会社として追加で賃金を支払う必要がある一方、それよりも短かったとしても差し引くことは許されていないのです。
このような制限によって、いわば労働者を不当な搾取から守っているということができます。

まとめ

一方、では会社にとってこの制度を導入するメリットはどこにあるのかと思われるかもしれませんが、給料計算がしやすくなることの他、労働者の意識変革や、労働者間の公平性の確保といったことが考えられます。
要するに、同じ仕事であっても、優秀な労働者は残業もせずにテキパキ片付ける一方、それほど優秀でない人は残業しないと片付かなかったりします。
後者の人のほうがなぜか給料が多くなるという事態を避けられるわけです。

最終更新日 2025年7月2日 by chaco2